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【読書】ヒトは狩人だった / 福島章

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 最近ニュース番組で報道されていた埼玉の拉致監禁事件ですが、約2年に渡って自宅に監禁していたそうですね。2年ってむちゃくちゃ長いですよね。よくもまあ長い間自分の管理下に置けたもんです。

世の中では、毎日に何かしらの犯罪が起きています。それは、攻撃的なものから非攻撃的なものまで。

犯罪行動を人が持つ行動原理として考えてみると、人は昔のことを無意識の中に記憶し、それを思い出すようにできているのではと思います。私たち人間にみられる攻撃性などはDNAに古くから刻まれた行動プログラムなのかもしれません。

完読したもののブログにまとめていない書籍が複数あります。その中に、犯罪者の行動原理について書かれた「ヒトは狩人だった」という書籍があります。そろそろ何か書いておかないと、頭の中から消えてしまいそうなので、思い出しながら書いていきたいと思います。

昔の記憶がインプットされている

ヒトの社会には、なぜ戦争を始めとするさまざまな殺人・闘争・暴力・攻撃・犯罪などが絶えることがなく続くのか?ヒトはなぜ、健康に有害であることを知りつつ、タバコ・覚醒剤・コカインのような興奮剤・幻覚剤をお好み、あるいはアルコールやシンナーのような酩酊剤にあえて溺れようとするのか?

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人は暴力的なシーンが大好きです。格闘技や戦闘シーンを見て「よし、いったれ」などと興奮を感じたことはないでしょうか。格闘技が嫌いな人でも、何かを攻撃し、倒し、退ける、という場面を見て少なからず興奮を覚えたことがあると思います。アンパンマンなんて可愛く書かれていますが、「攻撃→倒す→退ける」がありますよね。

なぜ人は「暴力的」が好きなのかというと、今よりはるか昔の狩りをしていた狩猟時代の行動パターンが、インプットされているからなんです。

人の行動原理の裏には、数十万年もの間に組み込まれ、選択、淘汰されてきた行動パターンがあります。現代人の心理と生理の深層には、狩猟時代の攻撃欲、牧蓄時代の支配欲があり、普段は理性を持ってそれが抑えられている状態なのですが、欲望として深層で眠っています。

人が日常的な退屈を嫌って、覚醒剤やアルコールを好み刺激を求める傾向なのも、闘争的な戦争やヤクザ映画を好むのも、それらによって狩猟時代の血が湧き、肉が踊る快楽を思い出しているからであると著者はいっています。

覚醒剤やアルコールなんかは、抑えている理性を麻痺させてしまい、眠っている感情的な、動物的な、衝動的な機能が表に出してしまうそうです。酒を飲んで気が強くなるのはこのせいなのでしょうか。

著者は理性の麻痺を「大脳皮質の休暇」と説明しています。

マクリーンの三位一体脳

 ポール・マクリーンというアメリカの博士が提唱する、三位一体脳というものがあります。

右脳左脳以外にも、脳は三つの層からなり、「爬虫類脳(脳幹)」「旧哺乳類脳(辺緑系)」「新哺乳類脳(新皮質)」で形成されます。

  • 爬虫類脳……食べる、寝る、交尾、目覚めなど反復・生命維持機能
  • 旧哺乳類脳…情動行動、性行動の中枢、本能を司る機能
  • 新哺乳類脳…話す、書く、創造するなど理性的に考え選択する機能

少し脳の話をすると、全ての動物には脳幹が存在します。体の脳である脳幹が存在しなければ、心臓も動かせないし呼吸もできません。なので、トカゲ(爬虫類)でも犬でも人でも脳幹が存在します。

そして、大脳辺縁系が存在しなければ、心はありません。辺緑系がないと喜んだり悲しんだりなどの感情は出ません。トカゲにはほぼ辺縁系がないそうなので、トカゲは笑ったり悲しんだりしません。

そして、大脳新皮質がなければ知性を発揮することはできません。サルなどは人に近いですが、どんなに教育しても知性には限界があります。人は進化とともに新皮質が大きくなっていきました。

人の進化の系統発生の歴史が、現代人の構造の中に刻まれているということです。構造はわからないですが、地層のようなイメージじゃないでしょうか。爬虫類脳の上に旧哺乳類脳があり、さらに上に新哺乳類脳がある。(地層といっても古層の爬虫類脳を使っていないわけではない)

最新のパソコンには最新のOSがありますが、現代人には最新の脳があるというわけではありません進化とともに古い脳が変化したのではなく、上書きされて深層に残っているので、時折古い部分が顔を覗かせてしまうということです。人の脳って深いですね。

呼び起こされる狩りの記憶

 先述したとおり、人には三層からなる脳の構造があります。著者は「大脳皮質の休暇」といって説明していましたが、訳すと薬物・アルコールにより、理性がぶっ飛んで昔の情動的行動が出てしまうということです。

覚醒剤を摂取した人は、意味わからないことを反復してやり続けると聞いたことがあります。これは、新哺乳類の脳が麻痺し、爬虫類脳の記憶が出ているのかもしれませんね。

そもそそも、人のルーツを遡ってみると、はじめは狩られる側であったことがわかります。

強大な敵に怯えながら常に周りに気をはっており、住む拠点を転々とし生活していた(採集期)。やがて、直立歩行をするようになり、手を使えるようになる。他の肉食動物の食い残りを盗み生活していた(腐食期)。人はついに武器を得るようになり、狩る側となった(狩猟期)。

すると、拠点を変えなくても生活できるようになり、やがて集落が形成された。次第に定住先で農業・牧畜を覚えていくようになる。

人が何かに怯えているのは採集期の記憶なんじゃないか。人が奪う行動は腐食期の記憶なんじゃないか。人が破壊・攻撃をしたくなるのは狩猟期の記憶なんじゃないか。ということです。

大脳皮質が麻痺状態になると、これらの記憶が呼び覚まされるということですね。

呼び起こされる旅への衝動

 人が狩猟生活に別れを告げて、農耕牧畜を覚えたことによって、それまでの行動パターンが変わっていきました。

狩猟時代は居住地を転々とし獲物を探していました。しかし、作物を育てるようになり同じ場所に定住することを余儀なくされました。身の危険を感じたからといってその場を離れることができなくなり、今までのように衝動的に移動ができなくなった。

ただ人は機会があれば空間的な移動をしたくウズウズしています

旅行の番組がよく見られていることを考えると納得できるはずです。また、新しい土地に行くとワクワクして探索をしませんか。人は空間移動を繰り返すようインプットされているのです。だから引越しをしたくなるのか?

呼び起こされる支配欲(所有原理)

 人は狩猟時代の後に、農耕牧畜時代へとシフトしました。このシフト段階で二種類の動物が存在し始めました。それが、「食用」と「狩り用(のちにペットへ)」です。

家畜として、繁殖させ、品種改良をし、人の都合の良い血統を選択し飼育するようになりました。一方で、狩り用の動物は、いわば「仲間」として扱うようになり、同時に感情的な交流もするようになっていきました。

殺人犯はいってしまえば同種殺人であるのですが、これは動物に感情交流を持ってしまったからじゃないかと思います。赤子から育てて一緒に暮らしてきた家畜を食用にすることで「仲間(同種)を殺す」という倒錯が起きたのじゃないでしょうか。

家畜を持つということは、言い換えれば他社を操作することとなります。自然と成長するのを見守るのではなく、そこにしつけや品種改良といった人工の手を加え自分の好きな状態を作り上げることで、快感を体験し始めたのです。家畜と暮らすことで、人は相手を操作し、支配し、改変する快楽を覚えてしまったということです。

冒頭で書いた監禁事件(今回以外のも)などは、この牧畜時代の記憶が関係しているのではないでしょうか。被害者を監禁し飼育することで、牧畜時代と同じ快感を思い出していると考えられます。

監禁事件では、被害者に対し暴行を加えるケースが多いようですが、これはSM的な快感ではなく、被害者の考え方や態度を変えるためと捉えることができます。

監禁というのは、相手を拘束して支配をし、自分たちの意のままに教育すること。これは、牧畜段階での動物たちとの付き合いの中で形成されてきたのです。

人を変えようとすることは、ある意味でその対象のアイデンティティを奪うことであり、それは彼(彼女)を非人間化することでもある。

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 子供に対し熱心な教育をする親がいますいよね。考えようによっては、熱心な親の教育も「支配欲」があるといえるのではないでしょうか。キラキラネームもそう捉えれますね。支配と教育は紙一重だということです。

今回の記事の中で「殺人犯の攻撃性などは、狩人時代の記憶」と述べました。ただ、だからといって許されることでは勿論ございません。通常の現代人にも攻撃性はインプットされていますが、理性でそれを抑えているはずです。

自分自身も「あいつムカつくな」などと考えたことはあります。これも、理性がなければ犯罪行動に走っていたかもしれません。社会で生きて行く上で必要な「理性」もっと磨く必要がありますね。