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【読書】関係する女所有する男 / 斎藤環

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 人間は不思議な生き物だ。それぞれに意思があり、異なった価値観を持っている。自分が美味しいと思ったモノが相手も美味いと感じるかわからない。 
先日、社内の研修で登壇した際に、「自分の価値観を押し付けるな」といった話をした。
相手にモノ・サービスを売る側は、自分が持つ「これは安い・お得」という価値基準でお客に接してはいけない。といった内容。
人それぞれに物事を判断する価値基準があり、自分が感じることが相手も感じるとは限らない。
また、これと同様に男女の関係(恋愛や結婚など)においても「男」と「女」の考えることは異なる。
ずいぶん前に斎藤環氏が書かれた、「関係する女、所有する男」を読んだ。
内容はと言うと、精神分析を軸に男女の社会的性差による価値基準の違いついて考察した一冊。
読み終えてかなり時間が立つが、腑に落ちることが多く面白かったのを覚えている。
周りが結婚して身を固めていく中、独身フリーマンたちだけで飲みに行くと、話題はもっぱら「結婚、子供、家」の3本立て。三十歳も近くなると現実味帯びてくる。
しかしながら、早くも結婚生活に終止符を打つ友人も現れてきている。(こいつらはモテるのでシンプルにむかつく)
なぜ社会には離婚してしまう人たちが居るのか?理由はたくさんあれど、根本は男女の価値観が異なるからではないだろうか。
男性と女性は違って当たり前(生物学的な性差も含め)。ただ、それを踏まえて考えることで相互理解はできるのではないか。
今回は「関係する女、所有する男」の内容をベースに、「男女の価値基準の違い」について再度考えてみようと思う。
ただ、先に言っておくが、全ての男性・女性に当てはまることではないと思うので、その点はあしからず。

所有原理と関係原理

 まずはじめに、男女間(恋愛、結婚)では、男性は所有原理で、女性は関係原理という考え方を著者はされている。
男性は女性を所有したいのに対し、女性は男性との関係性を重視する。
何章か忘れたが、「男は結婚をゴールと考え、女は結婚をスタートだと考える」という内容が印象的。
自分の生活範囲でしか言えないが、大方当てはまるのではと感じる。
ところで、所有原理・関係原理て何?と思う人もいると思うで、簡単に説明してみる。

数を増やしたい所有原理

 男女間における男性の行動は「所有原理」で動いている。
男性の行動様式を考えると、その根底に所有欲があるように思える。
所有=自分の管理下にすること。
はるか昔の狩猟時代では、どれだけ多くの獲物を獲得できるのかが社会的ステータスになっていた。
同様に現代でも「付き合った数、セックスした数、○○の数」を競いあったりする。
釣りで例えると、釣った魚をどうするよりも、より多くの魚を捕まえて自分の力を誇示したい。(いっぱい釣れたから「あげるよ」ではなくて、こんだけ釣ったんだぞと示したい)
また、釣りをしに行って魚を捕まえた場合、釣った魚に餌を与えるだろうか?
たくさん釣るまでに餌をまいたり、釣るスポットなど考えたりと魚に対し時間も労力も尽くす。ただ釣った後の魚には餌なんて与えない。
結婚生活における夫婦間でも同じだと思う。「この女性を手に入れるまで労力は惜しまないが、手に入れてしまえば無駄な努力はしたくない」まさに、「釣った魚には餌をやらない」だ。
男性に所有欲があると仮定すると、愛する女性を自分の独占的パートナーとして手に入れる(結婚する)までは頑張るが、一度手に入れば今まで以上の努力はしなくなる。
男性がこう考えるのは、牧場に放たれた牛は柵(結婚、家庭、社会の目など)があるから簡単には逃げないだろう。という甘い考えだからと著者は言う。
一度所有してしまえば大丈夫だろうという根拠のない安心感で、妻へのメンテナンスをおざなりにしてしまうのだと。
たしかに、「妻以外の異性に対し獲得努力をする夫(配下を増やす)」とは社会通念かのように存在している。
この所有原理というものを、自分自身に当てはめるとまさにそうだったので、ぐうの音も出ない。

過程が大事な関係原理

 一方で、女性の行動は「関係原理」で動いている。
関係とは、男女間における関係性の変化やそのプロセスを求めるということ。
なので、男性と違ってメンテナンスを重要視するはず。
また、結婚や恋愛(付き合う)を新しい関係の始まりと認識し、これから二人で頑張っていこうと考えやすいと著者は言っている。
こちらも同様に釣りで例えると、魚を何匹所有するかよりも、釣った魚を育て上げる過程を重要視しているということ。
女性からすれば結婚した夫はまだ未熟でしかない、そんな夫が自分との関係の中で理想の夫へと成長していくプロセスが大切なのだと。
また一見すると、女性が所有する膨大な服や化粧品、美容グッズなどは所有欲の現れのような気がする。
だがこれは、モノを所有すること以上に、「買い物」という行動(プロセス)に価値を感じているのではないかとも思う。
「普段1万円するものを2千円で買った」みたいなように消費行動自体に欲がある。こう考えると、女性のほうがバーゲンという言葉に敏感になるのも理解できる。
珍しいものを持っている(コレクション)という感情より、高価なモノを買っている(消費)という点に欲が働くのではないだろうか。
簡単にまとめると、恋愛・結婚・性関係において、男は量(所有している数)を求めるのに対し、女は質(自分との関係)を求めていると言うことだ。
自分の管理下に置く・数をこなすこと(クリア数)に満足する男性に対し、女性は誰かと話す・時間を共有することに満足しているように思える。
なので男性は、所有欲を満たすためには金も労力も惜しまないのであろう。男性って欲しいと思ったモノに何十万もつぎこんだりするからね。
私は男なのであくまで想像の範疇でしかないが、女性の行動や自分の行動を考えるとあながち間違いないと感じる。

「結婚」の捉え方が違うからすれ違う?

  先述したように、男性は所有を、女性は関係を求めている。
これは、結婚生活をどう捉えるかに特徴が出る。
冒頭でも書いたが、男性は結婚をゴールと捉え、女性は結婚をスタートと捉えがちだ。
結婚はひとつの性愛関係の帰結(ゴール)と考えるのに対し、結婚は新たな始まりのキッカケ(スタート)と考えるわけ。
こう考えると結婚後にメンテナンスしなくなるのは頷ける。所有すること自体に目的をおけばそうなる。
性の帰結と書けば、何か酷いようにも思えるが、結婚生活において自分の妻を「所有している」と感じている世の男性は多いはず。
また、結婚への希望も異なってくる。
男性は当時の妻(所有したいと思っていた時)と変わらないことを望むし、女性は自分との関係の中で成長していって欲しいと望む。
つまり、夫は結婚した当時の妻が「最高の妻」であり 、妻は結婚してから成長する夫が「最高の夫」だということ。
お互いに求めるところが違うので、年数を重ねるとすれ違うことはなんら不思議なことではないのかもしれない。
男女間で求めている・見ている価値基準が違うので、突き詰めると男と女は交じりあうことはできないことになる(共存はできると思うが)。なので離婚をする結末になるのであろうか。

過去の恋愛に関する考えも違う?

 文中に出てくる言葉で「 男は過去の女性の思い出をフォルダに入れるが、女は上書き保存をする。 」と言うのがある。
これは、アーティストの一青窈が言った言葉らしいが、胸をぐさりと刺された感覚になった。
男性は、いつまでも過去の女性の思い出が頭の中にある。なので、「久しぶり!元気?」とふと送ってみたりする。
逆に女性は、過去の男性に対しては冷淡である?なので、連絡が来ても塩対応だったりする。(もちろんゴミ箱フォルダから復活する例もあると思うが)
この男女の行動も「所有」と「関係」で考えてみると納得せざるを得ない。
フォルダ分けするという考えだからこそ、一度に複数人所有したがるのかもしれない。
そう考えると、男の浮気は現彼女に戻ることが前提の火遊び感覚、それに対し女性の場合はもう戻らないかもが前提にあるのであろう。
また、男女の性の働きに、「男はできるだけ多くの女性に働きかけ子孫を残すようにできており、女は身に宿した子孫を安全に守ろうと働きかける」という諸説がある。
男性は自分と関わった女性を全て覚えようとし、女性は自分に身籠ったパパ(一人だけ)のことだけを考えるようになると言う考え方。
こう考えると、男性は浮気を(一度に複数人を相手に)する生き物だ。と都合の良い解釈ができてしまう。ひんしゅくを買うねこれ。
今回考察した内容は、あくまで一例でしかない。
もっと言うと、今では女性の男性化、男性の女性化といった点でジェンダーの差異がなくなってきているように思える。
男性・女性はこうあるべき。といったステレオタイプ的な社会通念は存在する。だが、様々な文化、環境、ツールが折り重なっている現代ではその固定された考えはもはや形がないものになっていくのかもしれない。
自分が結婚するかどうか、むしろ続くかどうかは自分自身にもわからない。来るべきその時に向け女性のことをもう少し理解する必要がありそうだ。