【読書】笑うな / 筒井康隆
アメトークの中の読書好き芸人のコーナーで、「井筒康隆 笑うな」を紹介していた。
かなり昔に書かれた物だが、多くの方に読んでもらいたい一冊。
「笑うな」は筒井康隆氏の短編集だ。
私自身小説があまり好きではないのだが、当書はかなり好きな部類に入る。
ストーリーに意味を求めるのではなく、「感じる」といった部分が大きい。ショートストーリーなのでサクサク読めてしまう。
また、筒井康隆氏とは「パプリカ」の原作を書いた人でもある。
「他人の夢に介入できる」という設定の電脳SFストーリー。
当書の作中にも、夢に出てくる「アニマ」の話がある。
アニマとは、男性が無意識の中に秘めている女性象のことで、心理学者のユングが説いたもの。
人は社会的なペルソナ(仮面)を被っているが、逆にアニマによって精神のバランスをとっていると言う。
今回は、当書の中で最も好きなストーリを三つ紹介していく。
気になる人は是非一読をお勧めしたい。
傷ついたのは誰のこころ
「人間というのは、本能と社会的規範の狭間で、自我が揺れ動き心を痛ませる」 といった内容。
家に帰ると、自分の妻が警官とセックスをしている。それは「任意」なのか「レイプ」なのか?
警官という社会の規範が、人間の本能をむき出しにしている。その中で、3人の内在的な心と自我が揺れ動き傷ついて行く。
これは、フロイトの「イド、自我、超自我」を書いたのではないだろうか?。
大人になれば社会という規範をベースに思考したり、対外的な顔を作る。「この返答、行動、言動は・・・」と道徳的観念をもとに生活してしまっている。
この作品は、人によって感じ方がかなり変わると思うし、「意味わからん」と言う人もいるだろう。
だが、読めば何かしら思うことはあるはず。
駄鳥
「理性を保てず交わした約束に、後になってしっぺ返しにあう」といった内容。
駄鳥と旅をしている男が「時計をやるから肉食わせろ」と駝鳥に言って、骨になるまで肉を食べてしまう。街についたが金が無かったので、駄鳥の時計を奪おうとしたところ、男は駄鳥に肉を食べられ骨だけになってしまう。
骨になっているのに動けるというのは置いとくとして、何かを得るということは何かを差し出すことなのだなと深く感じた。
文明発展のために搾取(環境破壊)ばかりしているとしっぺ返しにあう。といったメタファーなのであろうか。
チョウ
「対象物が変化するにつれて、周りに取り巻く人の対応が変化していく」といった内容。
あり得ないが飼っている蝶が、虫サイズ→人サイズ→ビルサイズ→空サイズと巨大化していく。
最初は可愛い蝶にちやほやしていたが、デカすぎて公害を出すようになると疎ましく思い、最後には蝶を捉えられなくなり関心を抱かなくなる。
人は、対象物が自分達に害を出さなければもてはやし、自分達の脅威になるとなった途端に排斥しようとする。そして、自分達に遠く及ばなくなると無関心になる。
これは現代社会を表したそのものである。
まとめ
どれも短編なので、電車の乗り継ぐ間に読めてしまう。
読み終えた後に、それぞれ思考をめぐらしてしまう。
改めてだが、「短編集だったら小説いけるかも」と感じた。
私と同じように小説に苦手意識がある人は、まずは短編集をおすすめする。
中古とかで100円くらいで売っているはずなので、合間時間の暇つぶしにでもいかがだろうか。