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【読書】群れはなぜ同じ方向を目指すのか -群知能と意思決定の科学- / レン・フィッシャー

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 都会の駅周辺などを見渡してみると、人が密集する場所が必ず存在する。その密集する場所には、一見何のルールも無いよう見えるが、実は何らかの規律がある。

当書は、そんな集団における法則性を解説した書籍である。

混沌の中にも秩序はある 

 当書のキーワードの一つが、群知能という言葉。頻繁に出てくる「群知能」とは何か?

単純な要素が協調して秩序ある行動を生みだし、個々の能力の和を超える結果が得られること。〔アリの行動などにいうが、ネットワーク制御などにも用いられる〕

-Weblio辞書-

群れ(集団)とは、単純な規則によって生み出される。

単純な個々の行動が集合することで、秩序を生み出し相互作用をする。

個が集まると、統率性が表れ一つの生き物のようになる。

つまり、個の能力を超える「知性」が生みだされるということです。

めちゃくちゃ散らかっている部屋かと思いきや、住人独自のルール(秩序)があったりづる。ぐちゃぐちゃと統率のとれたルールと言えば分かり易いだろうか。

混沌と秩序は紙一重ということだ。

興味を持った5つの話

 以下、興味を持った内容を抜粋する。

  1. 魚群の動き
  2. 蟻コロニー最適化
  3. 出入口の人の動き
  4. 集団志向
  5. 集団の知恵 

1)魚群の動き

 海にいる魚の群れをTVなどで見たことがあるかと思う。なぜあれだけ統率がとれているかというと、単純な規則を単体が実行することでそれを可能にしている。

魚群には二つの規則がある。

  1. 前の魚を追うこと
  2. 横の魚の速度に合わせること

この二つの規則があることにより、統率のとれた集まりとなる。しかも、この群の中にはリーダーは存在しないし、導く存在もいないという。

確かに、人間社会でもライブ会場や駅前などの人が密集するところにはリーダーはいない。リーダーはいないが、前の人にぶつからないといったルールが存在し、全体を見ると統率がとれた集団となっている。

2)蟻コロニー最適化

 これは、蟻が持つ餌までの最短ルートを見つける習性を、最適化問題に適用しようというもの。

蟻は目がほぼ見えないが、フェロモンを巧みに使い行動しているそうだ。フェロモンの後をたどるように遺伝子的にプログラムされている 。

少しまとめると以下のとおり。

最初はランダムに餌を探していた蟻達は、たまたま餌を見つけた蟻の出すフェロモンに引き寄せられ、自然と蟻の行列ができていく。しかも、このフェロモンは時間が経過すると、消えていく性質らしく餌まで遠回りのルートは、自然と選択肢からなくなっていき、近いルートはフェロモンが濃くなり、より選ばれやすくなる。 

この蟻の習性を適用して、運搬費のコストを削減した実例もあるらしい。

より最短でより時間をかけずに目的地に着けば、運搬費(ガソリン代、人件費)は必然的に下がる。また、そうなることで運搬物の単価も変わってくる 。

蟻の習性が私たちの生活に関係しているのだ。

ちなみに、このフェロモンを疑似的に発生させ、蟻の巣の中に住む隠密スパイみたいな虫がいるそうだ。そいつ凄すぎ。

3)出入り口の人の動き

 人が密集する出入り口は必ずといっていいほど渋滞し動きが遅くなる。朝のホームの階段を思い出していただきたい。(初めて朝の山手線に乗車した時はビビった)

この、現象を当書ではわかりやすく例えてた。

朝食のシリアルを箱の開け口から出そうとするときに近い(省略)

シリアルで開け口が詰まり、それ以上何も出てこなくなるのだ。

シリアルをお皿に入れる時、目詰まりを起こし箱をたたいた経験がある。

狭い出入り口を通り抜けようとする人の動きにも同じような現象が起きる。

朝の駅の階段では出入り口付近にアーチ状の人だかりが広がり、我先に通り抜けようとする人であふれかえっている。

全員が歩くのを少し遅くすれば、全体としての脱出速度は速くなるのだが

この解決方法はというと、集団を小分けにすることだそうだ。

実際に採用されているのは、出入り口付近に非対称的に柱を立て、渋滞を緩和するという方法。

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※画像は私が作ったので正確なものではない

この柱があると、通路に居る人達の圧力を減らすことができ、互いに道をふさぎ合うのを防ぐことができるそうだ。

大きい体育館とか、競技場とかで柱を見たことがあるかと思う。入口付近の人の圧力を緩和するためなのだろうか。

4)集団志向

 集団志向とは、集団内の社会的圧力に押しやられる現象のこと。

特徴は以下の通り。

  • 画一性への圧力
  • 集団内の閉じた思考
  • 集団の過大評価

集団は、型にはまった思考に陥り易く、集団の決定事項に反するとハブられる。

この流れが、集団での解答を合理化してしまうし、さらには、自分の属している集団は強くて、イケてて、他の集団に比べ勝っていると勘違いしてしまう

以前に、私が投稿した内容と同じようなことが説明されている。

kaaaaawa1.hatenablog.com

集団に属しているという気持ちは、「面白いから」「喜んでくれるから」という理由で正気の沙汰ではない行動をとってしまい、歯止めが効かなくなる場合がある。

また、過激な民族主義や宗教意識においても、自身の行動が正当化される危険性がある。(イスラム教のジハードとか)

集団におけるメリット、デメリットは理解しないといけない。

5)集団の知恵「多数決の平均が正しい」

 何かの値を求める場合には、すべての答えの平均をとることが、正解への最善の道となる。

ある学会で、「ビンの中に硬貨を入れて、何枚入っているのかを参加者にあてさせる」という実験をしたそうだ。

ビンの中には硬貨が421枚入っており、参加者106人の解答はかなりばらつきがあった。しかし、すべての答えの平均値をとると419枚となり、ほぼ正解に近い解答となった。

他にも、肉のグラム、ビンの中の飴などの実験結果があったが、どれも正解に近い解答となってた。

いくつかの実験で判明したのが、集団の知恵を使えば、正しい答えに達することができるということ。学者用語では「状態推定問題」という。

この、集団の知恵を引き出すには、大前提として答えが明確に出ることそして、条件として「予想が独立して行われること」が重要となる。

つまり、周りと話し合って相談してしまうと、大きくはずれた予想となってしまう。

集団の知恵は、正しい答えに達することができるが、人の意見を参考にする考え方では、最善の道に大きく外れてしまう場合があるということだ。